製造業の工場では、数多くの職種が存在します。その中でも、製品の品質を管理する品質管理職は、さまざまな工場・製造業で活躍できるため人気な職種です。
しかし、「資格がなければ転職できないのか?」「未経験者は難しいのか?」など心配になる人がいます。また、仕事内容や年収、志望動機など気になります。
そこで、品質管理への転職を検討されている方へ、品質管理へ転職するために必要な情報を求人例を交えて紹介します。
もくじ
品質管理の転職で理解すべき仕事内容
まず品質管理とは、簡単にまとめると「不具合を無くす(減らす)」ことが主な仕事内容になります。具体的には、「工場で不具合品が出ないように工程を監視する」や「発生した不具合が再発しないように対策を練る」などが挙げられます。
品質管理が対処する不具合には明確な原因を特定することができない場合が多々あります。そのような場合でも、明確な答えの存在しない課題に対して粘り強くトライすることが求められる職種になります。
このことから、エントリーシートや面接で「明確な答えが存在しない問題に対して答えが出るまで、自分なりに仮設を立てて繰り返し検証できること」をアピールできるかどうかが品質管理への転職のポイントになります。
また、志望動機を書く際には具体的な仕事内容を理解しておく必要があります。品質管理の仕事は、主に「未然防止活動」と「再発防止活動」に分類されます。
- 未然防止活動
工場現場での生産活動において不具合は、必ずついて回るものです。その不具合の発生を未然に防止する活動が「未然防止活動」になります。
具体的な活動事例としては、工場内のパトロールやFMEA(機械の故障や不具合がどこで発生しうるかを想定して抽出する分析手法)への参加、過去トラブルの対策状況の経過観察などが挙げられます。
また、この部署で経験を積むと役員や社長に品質状況を報告するチャンス(マネジメントレビューやトップレビュー)が与えられることもあります。
- 再発防止活動
さらに、どのような製造業でも「不具合0件」を維持することは困難であるため、発生した不具合について再発を防止する対策が必要になります。それが、再発防止活動になります。
具体的に、「なぜ、不良品が発生したのか?」「なぜ、事前に原因を見つけられなかったのか?」ということを考えなければなりません。
つまり、日頃から問題が発生したときに原因を突き止めることを心掛けているという内容を伝えることができれば、品質管理の仕事に向いていることをアピールすることができます。
ちなみに以下は、精密機械加工の工場で再発防止活動の一環として使われている不良対策書になります。
こうした書類を利用することで、不良の発生原因を明らかにします。さらに次回、同じ製品の注文がきたときにどのような対策をとればよいか書いておくことで、同じ不良がでないようになります。
品質管理に転職するときに必要な資格はあるのか
次に気になるのが、品質管理の仕事に転職するときに「必要な資格があるのか」ということです。これに関しては、ほとんどの求人で必須資格に各当する資格はないものの、持っていると転職に有利な資格があります。
しかし、中には専門分野での品質管理の仕事の場合、その分野に関する資格が必要になってくることがあります。その場合は、求人票を確認しながら自分が持っている資格と同じか照らし合わせる必要があります。
例えば、食品を扱う工場の場合、調理師や栄養士などの資格が必要なことがあります。具体的には以下のような求人になります。
この工場は、千葉にある冷凍食品を製造している工場の求人になります。このように、必要の項目で「調理師や栄養士資格をお持ちの方」になっています。
このような、専門分野での品質管理の仕事を希望する場合はその分野の資格が必要になることがあるので注意しましょう。
品質管理検定を持っていると有利
では、一般的な品質管理の場合ではどのような資格があると有利になるのでしょうか。まず、品質管理検定の資格があります。品質管理検定は、品質管理に関する知識を客観的に評価する検定になります。この品質管理検定を保持することで、不具合を解析する手法とデータの統計処理の実力をアピールすることができます。
特に不具合解析手法は品質管理において非常に重要ですが、面接でアピールするには難しい項目になります。そこで品質管理検定2級以上を持つことで、客観的に品質管理への理解をアピールすることができます。
また、企業側もそのような人材を求めるため求人票に必須資格ではないものの、歓迎項目に品質管理検定があることがあります。例えば、以下は埼玉にある自動車部品を製造している工場の求人になります。
このように、必須資格ではないものの歓迎条件で品質管理検定を有する方になっています。そのため、品質管理検定を持っている方であれば、有利に転職を進められます。
重たい製品を扱う工場ではフォークリフトの資格が有利
2つ目の資格は、フォークリフトがあります。この免許を持っていると重たい荷物の積み下ろしができます。どのようなときに必要になる資格になるかというと、例えばお客さんが不具合品を発見した場合、それ以上の不具合品流出を避けるために出荷を一時停止して、出荷製品を再確認する必要があります。
出荷を止める以上、お客さんを待たせることになるので、出荷停止から再検査完了までのスピードが求められます。このような不測の緊急事態には、出荷停止をかけた品質管理スタッフが荷物の積み下ろしから、検査まで対応しなければならないため、フォークリフトの資格が必要になることがあります。
他には、扱う製品自体が重たい製品で品質管理の仕事でフォークリフトリフトを使用して作業を行う場合があります。
例えば、以下は埼玉にあるモルタルの製造を行っている工場の求人になります。
このように、一袋が25kgある製品を検査して何袋も運搬するのは大変な作業になります。そのため、フォークリフトで製品の運搬をするとスムーズに作業できるので、フォークリフトの資格が必要になります。
ちなみに以下が実際のフォークリフトの写真になります。
このように重たいものを運ぶとき、フォークリフトを操作するのが基本です。
クレーンを扱う工場では玉掛けが歓迎される
3つ目の資格は、玉掛けになります。玉掛けとは、工場内で人力では持ち上げられない重量物について、クレーンに掛けて持ち上げる資格となります。素人が重量物をクレーンにかけると落下の恐れがあり危険です。そのため品質管理スタッフがこの資格を持つと、工場現場で活躍する機会が増えるため良い評価をされます。
玉掛けの具体的な業務としては、「鉄パイプ等の金属製品をまとめて持ち上げる」や「金型の段取り替え(交換)」などが挙げられます。
求人例では、以下のようなものが挙げられます。
この求人は、千葉にある重機械の製造を行っている工場の求人になります。このように、品質管理の仕事で玉掛けの資格があると歓迎になる求人があります。
この工場のように、取り扱うものが大きくて重いものの場合玉掛けの資格があると有利になります。ちなみに以下は、実際に工場で鉄骨をクレーンで持ち上げているところです。
資格を持っている人よりも経験者のほうが歓迎される
一方で、品質管理の仕事はさまざまな製造業で活躍できるため、工場によって扱う製品や業務の流れなど必要とされる知識が異なります。さらに、誰でもすぐにできる単純な作業ではないため、転職時に経験者は優遇されやすいです。
例えば金属パイプを扱う工場の場合、「金属の流動解析」「金属疲労による不具合の原因解析」などを行います。このとき不具合の原因を追究し、同じ不具合が起こらないためにはどうするか考えなければいけません。そのため、ある程度の専門知識や金属に関する品質管理の経験が必要になります。
このような業種の場合、業務に関する資格というのは無いため、転職時は実務経験が必要になることがあります。例えば、以下は埼玉にある金属部品の熱処理加工業の求人になります。
このように、専門的な資格がないため必要な経験等の欄には「品質管理の実務経験」となっています。他の業種でも同様に、資格所有者よりも品質管理経験者のほうが歓迎されることが多いといえます。
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品質管理に応募するときの志望動機の書き方
それでは、品質管理に応募する時の志望動機はどのように書けばよいでしょうか。品質管理の志望動機は、自身のやりたいことと品質管理職の役割を結びつけることが重要になります。
このとき品質管理の役割としては、「不具合の分析力」と「対策の提案力」が求められます。そのため、今までに関連する実務経験があるか、なければ今までの経験で結びつけられるものを探す必要があります。
例えば実務経験がない場合でも、以下のように志望動機を書くことができます。
私は、高校時代にサッカー部のマネージャーをしていました。そのときに、実際に試合を見ながらスコア表をつけて失点の原因を考えて選手や監督に自分の考えを伝えるようにしていました。 その経験を活かして、同僚と共に解決が困難な課題にも粘り強く取り組み貴社に貢献できるよう努めますので、よろしくお願いいたします。 |
女性バージョンにしましたが、このように実際の実務経験がない場合であっても、今までの自分の経験を結びつけることで採用者に響く志望動機にすることができます。
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品質管理の年収を理解する
最後に品質管理職の年収についてご紹介します。品質管理の年収は、工場や業務内容によって異なりますが400~700万円程が相場となっています。これは、製造業全体の平均年収が297万円なので、製造業の職種の中でも高めの年収といえます。
加えて、品質管理職は工場の管理系へ出世する可能性があり、最終的には工場長になれることもあります。その場合、必然的に年収がアップすることになります。
例えば、以下は埼玉にある産業機器メーカーの求人になります。
この工場では、年収450万~650万円と年収が高めであります。また、「将来的に工場長の役割を期待」となっているため頑張れば出世することが可能です。
このような求人に応募することで、より高い年収の工場に入社することができます。
まとめ
ここまで、製造業における品質管理へ転職するポイントを説明してきました。品質管理職へ転職したい場合は、品質管理職の役割や仕事内容を理解し、自身の経験や適性と合っているかを見極める必要があります。
製造現場での仕事が多いため、品質管理は工場勤務になります。工場勤務の経験者は、製造現場での作業経験を評価されるため、品質管理未経験でも十分に転職のチャンスがあります。
さらに転職後に給料の昇給が望める上に、品質管理職は経験を積むとキャリアアップを狙える職種となっています。以上のことを理解したうえで転職活動を行うことで、自分の希望する求人に応募することができます。
工場・製造業に転職をするとき、ほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自分の力だけで求人を探すと、希望の条件を満たす求人を見つける作業のみならず、労働条件や年収の交渉・アポ取りなどさまざまな作業を自分でやらなければなりません。
そこで、転職サイトに登録することで、求人の紹介から労働条件や年収交渉だけでなく、履歴書や職務経歴書などの書類関係を送付するなど面倒な事務作業まで行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が違います。例えば「工場・製造業の転職に強い」「全国各地に強いのか、それとも都市部に強いのか」「20代・第二新卒が得意」「40歳以上でも転職を成功させてくれる」などの違いがあります。
転職を成功させるには、これらの違いを理解した上で転職サイトを活用しなければなりません。そこで、以下のページでそれぞれの転職サイトの特徴を解説しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。