他業種から工場に転職を考えるとき、「入社するにあたって必要な資格はあるのか」「有利な資格はあるのか」は気になります。
工場では色々な物がつくられています。そのため、自分が「どんな物を取り扱う工場に行きたいか」「どんなものを作りたいのか」をしっかり考える必要があります。その中から必要な資格・有利な資格を取得するようにしましょう。
また、基本的には実技試験や筆記試験などを行って合格しなければ免許をもらえません。しかし、中には受験資格としてある一定の実務経験が必要なものがあったり、試験などを必要とせず講習を受けるだけで、取得できる資格もあったりします。
そのため、今の自分がどのような資格を受けられるか、さらにはそれが転職でどう活かされるのかを解説していきます。
もくじ
工場・製造業で「役立つ資格」「使える資格」の種類一覧
まず気になるものとして、工場で実際に役立つ・使える資格はなんでしょうか。その中に自分がやりたい仕事で受験資格はあるのかを確認していきましょう。
食品工場・食品メーカー
まず、食品工場ですが実際のところ食品メーカーで働くうえで絶対に必須とされる資格はとくにありません。求人表の応募条件を確認しても資格が明記されていないことが多いです。転職後も資格がなくても活躍している人はたくさんいます。
また、仕事で必要なスキルは、基本的に入社後の研修や教育を通じて身につけることができます。とはいえ、持っていると転職に有利な資格もあります。
食品衛生責任者は簡単だけど役に立つ
まず、食品関係の中でも取り組みやすい資格として食品衛生責任者があります。食品衛生責任者は食品の製造・加工・調理・販売が衛生的に行われるように指導する人です。
国家資格ではなく公的資格になります。原則として誰でも受講できますが、食品衛生責任者の任命は都道府県の条例毎に細かく定められています。そのため、受講受付する前に都道府県や保健所政令市に連絡して受講者制限について確認する必要があります。
また、工場によっては資格支援してくれるところもあるので、転職サイトを活用する場合は担当者に資格支援のある求人かを確認しましょう。
例えば、以下は横浜にある食品を取り扱う工場の求人です。
このように、会社で支援してくれるところがあるので、無理して転職前に資格を取る必要はありません。入社後、資格取得するほうがいい場合もあります。
他には食品衛生管理者や調理師・調理技能士・栄養士などの資格あります。これらの資格は一定の実務経験が必要になってくるため、「勉強を頑張って資格を取る」だけでは取ることのできない資格になります。
化学工場
次に化学工場ではどうでしょう。まず、化学工場とは、化学物質を取り扱う工場全般を指す言葉です。化学薬品を製造したり化学物質を含んだ製品を製造したりする工場です。他にも顔料や塗料などを製造する工場も化学工場に含まれます。
化学工場でも必ず必要な資格はありませんが、持っていると歓迎される資格があります。
危険物取扱者
まず、危険物取扱者があります。危険物取扱者は甲種・乙種・丙種の三種類に分かれており、甲種は全ての危険物について取り扱い・定期点検・保安の監督ができるのに対して、乙種・丙種は取り扱える危険物に制限があります。さらに、乙種は第1~6類に分かれていて、それぞれ取り扱える危険物が異なります。
以下は乙種第1類~第6類の取り扱える危険物の分類です。
第1類 | 酸化性固体 |
第2類 | 可燃性固体 |
第3類 | 自然発火性物質及び禁水性物質 |
第4類 | 引火性液体 |
第5類 | 自己反応性物質 |
第6類 | 酸化性液体 |
そのため、危険物取扱者の資格取得を検討している人であれば、まずは乙種を狙いましょう。なお、取得する種類は狙っている工場求人の取り扱っている危険物を確認するといいです。また、乙種・丙種は誰でも受験できるのに対して、甲種は受験資格が必要になってきます。
例えば、以下は千葉にある石油プラントの求人です。
このような求人の場合、取り扱っている危険物が引火性液体なので、受験する種類は「乙種の第4類」になります。
高圧ガス製造保安責任者
他には、高圧ガスに関する資格があります。主に高圧ガス製造保安責任者・高圧ガス販売主任者・液化石油ガス設備士などがあります。取り扱える高圧ガスの種類や行える業務は資格によって変わります。
例えば高圧ガス製造保安責任者の場合、受験資格はなく誰でも受けることができます。ただ、甲種はある程度の実務経験がなければ難しい試験になります。また、工場によっては転職時に資格必須のところがあります。
例えば、以下は滋賀にある半導体製造工場の求人です。
このように、高圧ガス製造保安責任者甲種の資格が必要です。業務内容が装置設計の場合、企業も高圧ガスの取り扱い経験がある人を望んでいることが多いです。
そうした場合、工場未経験の中途採用者が探す求人としては、試験や業務内容がそこまで難しくない求人へ応募しましょう。例えば、以下は兵庫にある産業ガスを製造する工場の求人です。
このように資格は必須内容であるものの、高圧ガス製造保安責任者丙種になっています。また、業務内容も液体材料や産業ガスの充填・製造作業なので難しいことはありません。
こういった求人であれば、工場未経験の人でも頑張って資格を取り、中途採用募集に応募できます。
ボイラー技士
他には、ボイラー技士の資格があります。ボイラー技士には二級・一級・特級があり、二級は誰でも受験できますが、一級は二級を持っていないと受験できません。また、特級は一級を持っていないと受験できません。
そのため、まずはボイラー技士二級を取って転職できたらスキルアップとして一級・特級の資格取得を目指しましょう。
また、求人募集では必須条件ではないものの、ボイラー技士を持っていると歓迎されることがあるので、二級を資格取得しておいて損はありません。
例えば、以下は福岡にある石炭ガス化プラントの求人です。
このように、人気の環境エネルギー関係の工場で石炭ガス化プラントの監視業務などを行えるようになります。
その他にも化学工場系では、有機溶剤作業主任者や特定化学物質等作業主任者などの資格を持っていると歓迎されます。
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検査
次に検査の資格があります。検査の仕事は主に製品が「良品」か「不良品」かをチェックする仕事です。この良いものか悪いものか判断するとき、資格を持っている人が検査をしなければいけない製品なのか、資格がなくても検査できる製品なのか違いがあります。
違いに関する明確な基準はありませんが、人命に関わるものなどは資格を持っている人の検査が必要です。例えば、車の自動車検査員や飛行機の航空工場検査員などの乗り物の検査がこれに当たります。求人で見てみると次のようなものがあります。
以下は大阪にある自動車車検工場の求人です。
この工場では自動車検査員の資格が必須内容になっていますが、それ以外の年齢・性別などの内容は一切不問です。そのため、自動車検査員の資格はあるけど40歳を超えて転職を考えているような人は、このような求人であれば問題なく応募可能です。
クレーンなどの機械オペレーターや溶接
他には、製造業の工場で加工者・エンジニアが持っていると有利な資格があります。これに関しては、工場の職種や取り扱う製品・加工内容などによって必要な資格が変わってきます。また、その種類はとてもたくさんの種類に分類されているため、試験勉強を行う前にまず、どのような資格が必要か調べる必要があります。
例えば、鉄骨製品に関する資格でいうと、組み立てでは一級建築施工管理技士や鉄骨工事管理責任者などの資格があります。溶接であれば、アーク溶接資格や半自動溶接資格などの資格があります。このように、同じ製品・同じ業務内容でも何種類にも細かく分類されます。
他にもオペレーター業務でいうと、製鉄工場などで使われる重機の資格は車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転者という資格があります。これは、バックホーやブルドーザーなどの建設機械を運転するための資格です。他には、クレーンなどもの操縦者もオペレーターの業務になります。
以下はバックホーと呼ばれる機械です。工事現場などで使用される機械ですが、重いものを持ったり、運んだりできるので工場で使われることがあります。
他には、以下はクレーンと呼ばれる機械です。この機械は重たいものを吊って移動させるときに使用する機械です。
また、半導体などを取り扱っている精密機械加工の工場で有利になる資格は機械工技能士の資格です。その他にメッキやラインなどの業務がありますが、これらの作業では特に必要な資格はありません。
このようにオペレーター業務で有利になる資格は何トンという材料を扱うのに必要な機械から、何ミクロンという細かい加工をするのに使われる精密機械まで幅広くあります。
そのため、事前にどのような資格が必要か確認しておく必要があります。しかし、製造業の現場ではすぐに働ける人材を募集しているところが多いので、資格がなくても積極的に応募した方がいいです。
例えば、以下は大阪にある溶接を行う工場の求人です。
この会社では「溶接経験者歓迎」で「資格取得制度」となっています。この場合、資格は入社後会社が支援してくれます。溶接経験も必ず必要ではなく「歓迎」なので未経験者でも大丈夫です。
このように、工場の現場では資格よりも経験を重視しているところが多くあります。
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物流・倉庫
次に物流・倉庫などの工場ではどうでしょう。一般的に物流・倉庫の業務は商品や荷物の整理・検品・仕分け・出荷準備などを行う仕事になります。
その作業は多岐にわたるため、いくつかの部署に分かれて作業することが多いです。そのため荷物を持ち運んだり、商品の在庫数や受注数などの管理したり、それぞれの部署で必要な資格が変わってきます。
ただ、物流・倉庫の工場でも必ず持っていないといけない資格というのは少なく、持っていると有利というものがほとんどです。
例えば運搬に有利な資格だと、自動車免許(大型、中型、大型特殊、けん引など)やフォークリフト運転技能者などを持っていると喜ばれます。また、管理業務であれば、運行管理者(貨物)や通関士などの資格があります。
そのため、まずは自分が行いたい業務内容を絞ってから、どのような資格があると便利か確認しましょう。
例えば、以下は東京・大阪・愛知など20カ所に支店を持つ貨物自動車運送事業社の求人です。
この会社ではドライバー部門と作業部門での求人をしており、ドライバー部門では普通自動車免許が必要で、作業部門ではフォークリフトの資格が必要になっています。
このように必ず必要な資格があったりするので、求人応募前・資格取得前には必ず求人票を確認するようにしましょう。参考までに、以下が実際のフォークリフトの写真です。
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電気
次に電気関係の仕事ではどうでしょうか。工場では、いろいろな設備や機械を使用して製品を作ります。その設備や機械は、高い電圧を使用して動くものもが多くあります。
万が一誤作動を起こしたり、使っている最中に故障したりすれば、大きな事故につながる可能性があります。そのため、工場の設備や機械、さらに電気系統は定期的に点検・整備を行う必要があります。これを「保全」「設備保全」といいます。
また、機械が壊れたときに修理して元の状態に戻すことを「保守」といいます。
そのような電気関係の仕事をするのに必要な資格がいくつかあります。まず、受変電設備などの電気設備を保守・点検するのに必要な資格は電気主任技術者の資格です。
そして送電線や配電盤、電灯、電力機器などの設備の工事を行うのに必要な資格は電気工事士の資格です。それから、電気工事を実施するときに、施工計画や施工図の作成・工事の工程管理・品質管理・安全管理等の工事の施工管理を行うのに必要な資格が電気工事施工管理技士の資格です。
電気主任技術者と電気工事施工管理技士は工事が行えないのに対して、電気工事士は名前の通り電気工事を行える資格になっています。
そのため、工場ではこれら全てを持っているとたいへん喜ばれます。会社によってはこれらの免許が必須のところもあります。
例えば、以下は神奈川や静岡のサランラップを生産する工場の求人です。
このように電気関係の資格を持っていることが必須の工場求人があります。
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生産管理・生産技術・品質管理
次に、管理の仕事ではどうでしょう。一言で管理といってもさまざまな管理があります。例えば工場の安全を管理する「安全管理者」、工場の衛生面を管理して従業員の健康状態を守る「衛生管理者」、安全管理と衛生管理の両方を管理する「総括安全衛生管理者」などがあります。
また購買管理や在庫管理、生産計画、工程管理、需要予測、品質管理などさまざまな管理の仕事を行う「生産管理」は特定の生産管理者のような資格はありませんが、持っていると役に立つ資格があります。
それが、中小企業診断士の資格です。中小企業診断士は経営コンサルタントの資格ですが、生産管理のように「何をいつまでに、どこで、どれだけ作るか」を考え、そのために必要な材料、人材、設備を確保する計画を作成したりする経営者側のような仕事なので、中小企業診断士の試験で勉強する内容が役に立ちます。
ただ中小企業診断士は異常なほど難しいですし、必ず必要な資格というわけではありません。管理の仕事では、資格よりもコミュニケーションスキルが高い人を求めていることが多いです。
生産管理の仕事ではさまざまな部署の方と接する機会が多く、無理なお願いをすることが多いので、その人を上手く動かすためにコミュニケーション能力が高い人を置きたいというのがあります。
例えば、以下は大阪にある照明器具を取り扱っている会社の求人です。
このように、この会社での必須条件は車の運転免許だけで円滑なコミュニケーションがとれる人を歓迎しています。そのため、人と関わることが得意な人に向いている仕事とも言えるでしょう。
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環境改善・排水処理や水質管理
それから、工場の仕事では製品を作ることに関わる仕事以外にもたくさんの仕事があります。その中の一つが環境に関わる仕事です。
例えば、金属を切る時に出る大きな音やモノを作る時に出てくる工場排水などの水質に関するものも、工場のお仕事に一つになります。
環境に関する資格の中で、ばい煙や排水・土壌の中の有害物質・悪臭物質などの測定および計量管理を行うための資格である「環境計量士(濃度関係)」、プレスや送風機等の騒音源を有する工場などの騒音の測定および計量管理を行うための資格「環境計量士(騒音・振動関係)」などがあります。
また、排水を処理する装置で浄化槽というものがあり、それを管理する資格で浄化槽管理士というものがあります。浄化槽管理者の試験に合格すると工場の浄化槽だけでなく、すべての浄化槽の管理ができるようになります。試験に合格をすると以下のような免状がいただけます。
免状を得ると工場で浄化槽の管理をすることもできますし、委託されて工場や個人の家に一人で点検に行くこともできるようになります。
例えば、以下は長野にある浄化センターの求人です。
この施設の場合、工場の中にある浄化槽や処理施設の点検・管理になるので外にでる必要がありません。
また、以下は愛知にある浄化槽点検の会社です。
この会社の場合は、個人宅などに設置されている浄化槽の保守点検を行うため一人で各施設へ回る必要があります。このように、浄化槽管理士の免許を持っていると自分にあった働きかたができるようになります。
その他にも環境の資格には公害防止管理者や環境測定士などの資格もあります。
転職後に資格取得を考えるのが適切
なお工場へ転職を考えるとき、良い条件で転職するために資格を取得してから転職を考える人がいます。しかし、この考え方はあまりおすすめしません。
理由はいくつかありますが、まず工場によって必要とされる資格が異なるからです。例えば同じ加工業でも板金工場であれば、アーク溶接資格や半自動溶接などの資格が重宝されます。一方で精密機械加工の工場であれば、機械工技能士の資格が有利になります。
もう一つの理由は、資格がなくても働ける工場が多いからです。しかも会社としてどうしても資格が必要な場合、会社で支援してくれることが多いです。
例えば、以下は大阪にある飲料メーカーの求人です。
この会社では、フォークリフトのオペレーターを募集していますが、未経験OKになっているので入社後資格取得支援制度で免許を取得することができます。
以上のことから考えて、無理に転職前に資格取得を目指さなくてもよいのです。技術手当などでいきなり高収入を目指すのではなく、最初のうちは多少給料が安くても、資格取得代などを考えれば、会社の資格取得支援制度を活用した方が得になります。
また、資格を持っている方が出世しやすいなどと考える方もいますが、このことに関しても入社時に資格を持ってなくても何ら問題はありません。
まとめ
ここまで、さまざまな工場の資格についてお話してきましたが、転職前に資格をとるのではなく、転職後にその会社でどのような業務をするのか、その業務に必要な資格は何なのかが重要になってきます。
そのため、まず自分は何をやりたいのか、そのためにはどんな工場に入ればいいのかをしっかりと見極める必要があります。
そのあと、自分が行きたい会社に入社し、配属された部署で必要な資格を仕事しながら勉強するのが望ましいです。
このように考えれば、免許が無くても問題なく転職活動できることが分かります。資格を気にするよりも、年齢の若い有利なうちに活動をするほど転職で成功しやすくなります。
工場・製造業に転職をするとき、ほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自分の力だけで求人を探すと、希望の条件を満たす求人を見つける作業のみならず、労働条件や年収の交渉・アポ取りなどさまざまな作業を自分でやらなければなりません。
そこで、転職サイトに登録することで、求人の紹介から労働条件や年収交渉だけでなく、履歴書や職務経歴書などの書類関係を送付するなど面倒な事務作業まで行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が違います。例えば「工場・製造業の転職に強い」「全国各地に強いのか、それとも都市部に強いのか」「20代・第二新卒が得意」「40歳以上でも転職を成功させてくれる」などの違いがあります。
転職を成功させるには、これらの違いを理解した上で転職サイトを活用しなければなりません。そこで、以下のページでそれぞれの転職サイトの特徴を解説しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。