製造業・工場の業種は様々なものに分類されます。その中で、ゴム製品の製造業は大きな産業の一つです。ゴム製品は私たちの暮らしの中で、欠かすことのできないものといえます。
例えば、靴底のゴムやスマホ内部のゴムパッキンから車のタイヤやゴムマットなど様々なところでゴムが使用されています。
そのため、多種多様の工場があるのでゴム製品製造業に転職を考える人が多くいます。しかし、仕事内容や給料などの情報は少ないため、転職をためらってしまいます。
そこで、この記事ではゴム製品を取り扱う工場に転職するために知っておきたい情報を解説していきます。
もくじ
ゴム工場での仕事内容を理解する
まず、ゴムの製造工場では様々な工程があり工程ごと行う業務が変わってきます。そこで、ゴム製造業に転職を考えたときに最初に知っておきたいことが、工程ごとでの仕事内容です。
工程ごとにどのような仕事内容なのか理解したうえで、自分のやりたい仕事を見つけるのがゴム製造業に転職するときのポイントになります。
ゴム製造業での作業は大まかに以下の5つの工程に分けされています。
- 配合
作るゴムによって原料の種類や量が変わります。その調整を行うのが配合工程になります。
- 精練工程
配合工程で決まった配合率に基づいて原料を混ぜ合わせる工程が精練工程になります。
- 成型
ゴムの形を作る工程が成型工程になります。
- 加硫
ゴムは力を加えると変形して、力を抜くと元の形に戻る性質があります。しかし、ここまでの工程だけでは力を加えると変形はしますが、元の形には戻りません。そこで、原料のゴムに硫黄を混ぜて熱を加えることによってゴムの性質を持たせることができます。これを行うのが加硫工程になります。
- 検査
出来上がった製品が注文通りのものになっているか確認するのが検査工程になります。
ゴム工場では、これらの工程ごとに分かれて業務を行うようになります。それぞれの工程で出来る人・出来ない人やメリット・デメリットがあるので以下で説明していきます。
化学系の経験がある人は配合工程がおすすめ
まず、ゴムはゴムの木から採れる樹液を固めて作られます。しかし、それだけではゴムにはならないので原料のゴムと配合剤を混ぜてゴムを作ります。この原料のゴムと配合剤を混ぜ合わせる工程が配合工程になります。
ゴムは様々な分子(配合剤)を化学的に結合させなければゴムになりません。配合剤はゴム製品によって種類や分量を変えます。また、会社ごと自社の配合比などがありお客様のニーズに合わせて配合を変えています。そのため、ある程度の専門的知識を求められることが多くあります。
そこで、求人票の「対象になる人」や「応募要件」等をしっかり確認する必要があります。例えば、以下は大手タイヤ製造会社の求人になります。
この工場では、「ゴム配合プロセスおよび製造条件の設定」等を行う業務になっています。また、応募要件で「化学系のバックグラウンドをお持ちの方」になっています。
その他には、「基礎研究経験がある人」や「化学系専攻」などの応募要件がある場合があるので求人票を見るときは気を付けるようにしましょう。
では、なぜ配合工程がおすすめなのかというと一つ目は、給料がいいことです。詳しくは後ほど説明しますが、配合工程は専門的知識が必要になるため他の工程に比べて給料がよくなります。
次に他の工程に比べて環境がいいことです。ゴム工場では、ゴムを熱して加工するため工場内の気温が高かったり、ゴム特有の匂いが工場中したりします。そのため、窓を開けて作業したりマスクをしたりして対策していますが、夏は暑く冬は寒い状況になってしまいます。
しかし、配合工程は加工場所と違うところに作業場があるので、加工のときにでる熱やニオイの影響が少なくてすみます。このような理由から、化学系の経験がある人は配合工程がおすすめです。
化学系の経験やゴム工場の経験がない人の転職は難しいのか
なお、ゴム工場では「化学系の経験がないと仕事はないのか」「ゴム工場で働いたことがないと仕事はないのか」と心配する人もいると思います。確かにそれらの経験があれば就職先の選択肢は広がります。
特にゴム製品の開発や評価・解析などを行う場合、専門的知識や経験が必須条件になることがあります。例えば以下のような求人がこれに該当します。
研究開発部でのゴムサンプルの評価・解析を行う業務になっています。必須条件では、ゴムの設計・成型・評価の経験のある方になっているため、経験が無ければ難しい求人になります。
未経験者は加工が狙い目
一方で未経験者はどうでしょうか。「化学系の経験なくてもOK」あるいは「未経験者歓迎」という求人はたくさん存在します。
例えば以下埼玉にあるゴム製造工場の求人です。
こちらは精練工程の求人になります。精練工程では、配合工程で決められた配合率に基づいて原料ゴムに配合剤を混ぜ合わせます。混ぜ合わせは機械が行うので、精練工程では混合機の操作がメインになる機械オペレーター業務になります。
ゴム精練加工の求人のほとんどが未経験歓迎になります。というのも、機械操作は難しい作業がなく同じことを繰り返す作業が多いからです。そのため求める求人の欄には「コツコツした業務が得意な方歓迎」となっているのです。
他には、以下の東京にあるゴムパッキンの製造を行っている工場の求人です。
こちらは加硫の工程の求人になります。ゴムは力を加えると変形して、力を抜くと元の形に戻る性質があります。しかし、加硫前のゴムは力を加えると変形はしますが、力を抜いても元の形には戻りません。そこで、原料のゴムに硫黄を混ぜて熱を加えることによって、ゴムの性質を持たせることができます。これが、加硫工程になります。
このような加硫作業では、機械操作がメインになる業務のため難しい作業がありません。そのため、必要な資格や経験・学歴などが不問な求人が多いです。
これらの求人に共通していることが機械操作をメインにした加工現場であるということです。機械操作はある程度パターンがあり、それを覚えればいいだけなので難しいことはありません。なかには、材料を機械にセットしてスタートボタンを押すだけの簡単な場合もあります。
具体的に加工現場での工程は、上で説明した精練工程と加硫工程の他に成型工程があります。
意外に未経験者歓迎な成形工程
では、成形工程はどうでしょう。成型工程と聞くと難しいイメージがあり、未経験者ではできないと思われがちです。しかし、多くの場合で決められた型があり、そこに母材を投入して機械のスタートボタンを押すという作業になるため難しいことはないのです。
なお、ゴムには色々な種類があり様々な特性があるため、工場ごとゴムに合わせた成形方法を用いて加工が行われます。
参考までに、主にゴム成形で行われる方法は以下の3つになります。
- プレス成型
まず、プレス成形があります。プレス成型には、コンプレッション成型やトランスファー成型などの成形方法がありますが、基本的には金型に熱と圧力を加えてゴムの形を作る方法です。
図で表すと以下のようになります。
以下は実際に圧縮成形で作られた電卓のラバー部分です。
他には、パッキンやチューブなども圧縮成形で作られています。
- 射出成型
次に、射出成型があります。インジェクション成形ともいわれる方法で、熱を加えて液状化したゴムやプラスチックを金型に押し出す(射出する)方法です。
図で表すと以下のようになります。
ちなみに射出成型では、以下の写真のような歯ブラシなどが作られます。
その他には、スマートフォンのカバーやペットボトルなどの小さいものから車のバンパーなどの大型部品までさまざまなものが射出成型で作られます。
- 押出成型
次に、押出成型があります。押出成型は射出成型と同じように、熱を加えて液状化したゴムを金型に押し出す方法になります。射出成型で加工された品物はそのまま製品・部品になります。例えば射出成型で紹介した歯ブラシなどです。
それに対して、押出成型で加工された品物は材料として売られるため、基本的には加工屋さんなどに販売します。参考までに、以下は押出成型で加工された材料になります。
このように、押出成型の工程は製品加工ではなく素材加工になります。図で表すと以下のようになります。
これら3つの成型工程では、機械操作がメインの作業になるため知識や経験がなくても問題なく応募できます。例えば、以下は神奈川にあるゴム工場の求人なります。
この工場は押出成型を行っている工場の求人です。このように、経験や資格・学歴は不問になっています。
やりがいを求めるなら機械成型
一方で成型の中に機械加工による成型があります。機械加工の成型では、圧縮成形などの成型とは異なりゴム素材をドリルなどの刃物を使って加工する成型方法になります。これは、押出成型などで作られた材料をマシニングセンタや旋盤などを使用して加工するというものです。
以下が実際に成型で使われるNC旋盤です。
さらに以下が上のNC旋盤で加工した製品になります。
このような製品の加工を行う旋盤やマシニングセンタの場合、プログラム作成から刃物の取り付けなどの段取り作業・加工を行うようになります。そのため、プログラミングの知識や加工時に必要な技術が必要になってきます。
しかし、ほとんどの工場で入社後に指導するというスタンスをとっているため「経験・知識・技能等不問」のところが多いです。
とはいえ大変な作業や難しい作業があるので、物づくりが好きな人や仕事にやりがいを持って働きたい人には向いています。
このような加工成型を行いたい場合は、以下のような求人に申し込むようになります。
この工場は、埼玉にあるウレタンゴムの製造を行う工場の求人になります。作業内容はNC旋盤を使ってウレタンの加工行う作業になります。つまり、NC旋盤の機械オペレーターの仕事になります。
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「臭い」「暑い」が嫌な人は検査がおすすめ
なお、成形工程などの作業場では機械熱などにより暑かったり、ゴムの熱せられたニオイがしたり、ゴムが重くて大変だったりします。そのような大変なところが嫌な人は検査がよいでしょう。
検査では、主に目視による検査が行われます。また、工場によっては梱包作業やバリ取り(製品から出ている無駄な部分を取り除く作業)なども検査員が行う工場があります。
いずれにしても、検査の業務は軽作業になるため重労働などが苦手な人に向いている工程だといえます。また、検査室は現場と区切られているため冷暖房がきいており、ゴムのにおいもそこまできつくありません。このような検査の工程を行いたい場合は、以下のような求人に申し込むようになります。
この工場は埼玉にある工業用ゴム製品の製造を行っている工場で、PCやカメラの内部パーツなどで使われるゴム製品の検査・仕上げ作業を行う業務になっています。そのため、扱う製品は小さく軽いものになるので力は使わなくてよい仕事になります。
また、業務内容も難しい内容ではないので「未経験の方も大歓迎」となっています。
給料から考えるゴム工場
一方で、ゴム製造工場の仕事ではどのぐらいの給料がもらえるのか気になります。ゴム製造業では主に、「配合」「加工」「検査」の3つの分野に分類されることが多いです。つまり、給料面においてもこの3つの分野に分けて確認します。
では、実際の求人票と照らし合わせながら確認していきます。まず、配合部門では東京にある工業用ゴム製品の製造を行っている工場を例に上げます。下の求人票によると月給で25万円~55万円になっています。
次に加工部門では、東京にあるゴム精練加工を行っている工場を例に上げます。この求人では、月給が17万円~33万円で提示されています。
次に検査部門では、神奈川にある自動車用ゴムホースを製造している工場を例に上げます。下の求人票によると月給が17万1000円~19万1000円で提示されています。
このように、配合部門は25万円~55万円であり、加工部門と検査部門に比べ給料が高いことが分かります。これは、配合部門だと専門的知識が必要であるためです。
では、加工部門と検査部門で初任給が同じものの最高月給に違いがあるのはなぜでしょうか。それは、どちらも未経験からの採用が可能なため最初は低い給料からスタートになります。その後、加工部門では徐々にステップアップをしていき機械操作などの難しい業務を行っていくため金額が高くなっていきます。
それに比べて、検査部門はあまり専門的知識が必要なく作業も単純なものになるため最低月給と最高月給の差が少ないといえます。
それでは、製造業の他の職種と比べると高いのか低いのか気になります。これを知るためには、製造業全体の平均月給を確認する必要があります。
製造業全体の平均月給は低いところで「20~24歳で初年度の平均月給」が20万円、高いところで「50~54歳で勤務年数25~29年の平均月給」が46万2000円になります。
これを参考に、求人票を確認したときに給料が多いのか少ないのか判断できるようになります。例えば、先ほど示した「加工部門の17~33万円」と「検査部門の17万1000円~19万円」であれば、製造業全体の平均月給20万~46万2000円より低いことが分かります。
まとめ
ここまで、ゴム製造工場に転職するときに知っておきたい情報について解説してきました。ポイントとしては、まずゴム製造工場ではどのような工程があるか知り、その中から自分のやりたいことを探すのが重要になってきます。
その中で、化学系の経験がある人は給料や環境がよい配合の工程がおすすめです。経験のない方は加工や検査の工程であれば、基本的に必要な経験や知識などが要らないので誰でも応募することが可能です。加えて、軽作業で環境がよいところがいい人は検査に向いています。
また、ゴム製造業では部署ごと給料に差があります。専門的知識が必要な配合部では、加工部と検査部に比べて高い月給になります。加工部では、経験と技術を積んでいくと段々と高くなりますが、検査部では単純作業が多いため最低と最高の差が少なくなります。
これらのことをしっかりと理解した上でゴム製造の仕事を選べば、転職後にイメージと違うという失敗を減らすことができます。また、転職活動を行うときもスムーズにいき、転職後も充実したものになります。
工場・製造業に転職をするとき、ほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自分の力だけで求人を探すと、希望の条件を満たす求人を見つける作業のみならず、労働条件や年収の交渉・アポ取りなどさまざまな作業を自分でやらなければなりません。
そこで、転職サイトに登録することで、求人の紹介から労働条件や年収交渉だけでなく、履歴書や職務経歴書などの書類関係を送付するなど面倒な事務作業まで行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が違います。例えば「工場・製造業の転職に強い」「全国各地に強いのか、それとも都市部に強いのか」「20代・第二新卒が得意」「40歳以上でも転職を成功させてくれる」などの違いがあります。
転職を成功させるには、これらの違いを理解した上で転職サイトを活用しなければなりません。そこで、以下のページでそれぞれの転職サイトの特徴を解説しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。