SEの仕事の中でも、一つの大きな分野が工場・製造業の社内SEです。社内SEはSIer(システムの設計や開発、運用などを請け負う企業)のSEなどに比べて残業時間が少なかったり、上流工程に関われたりするため人気があります。
しかし、闇雲に社内SEの求人を探しても希望の転職を成功させることは難しいです。まず、工場・製造業でのSEの仕事内容を理解する必要があります。その後、残業時間の有無を確認して、さらに必要な資格があるかなどを合わせてチェックすることで自分の理想の転職をすることができます。
そこで、この記事では工場・製造業におけるSEの仕事内容や必要な資格はなにか、さらに給料面についても解説していきます。
もくじ
製造業のSEが行う仕事内容を理解する
まず、製造業のSEに転職する上で知っておきたいことが業務内容です。SEの仕事を一言で表すとコンピューターシステムを取り扱うことですが、具体的には新しいシステムを開発する業務やシステムを運用する業務などさまざまです。
例えば、製造工場では大まかに以下のような工程があります。
これらをアナログで管理すると、各部署で内容をまとめたり、確認したりするので非常に不便で効率が悪くなります。そのため、こういったものをパソコン上で管理して会社内のどこでも見れるようにすることで便利で効率が良くなります。
しかし、こういったシステムを作るのは非常に大変で簡単にはできません。そこで、システムエンジニアが専門的にシステムを開発したり、運用したりします。以下で、もう少し具体的に一つずつ説明していきます。
- システム開発
まず、新しいシステムを設計するシステム開発の仕事があります。これまで使っていたシステムでは対応できなくなったときや、もっと便利で使いやすいサービスが必要になったときにシステム開発の仕事が必要になります。
またシステム開発では、開発の目的や概要を決めるシステム企画も行います。なぜなら開発にかかる期間や費用を考えたりリスク分析を事前に行ったりすることで、その後スムーズに開発作業を進められるからです。
例えば、以下は神奈川にある金属を製造している工場の求人になります。
この工場では、生産管理システムの企画や開発を行う社内SEを募集しています。他の部署の人と交渉や調整をしながら作業を進めるので、コミュニケーション能力が高い人やチームワークが好きな人に向いている仕事です。
なお1つのシステムを開発するためには短くても数ヶ月、長いと数年かかります。そのためシステムが無事に完成し、会社の役に立つとき大きなやりがいを感じます。
- システム運用
次に、システム運用の仕事があります。システム運用の仕事内容は、サーバーやネットワークが正常に動いているか監視して、システム障害が発生しないようにすることです。なお、工場によって毎日チェックすべき項目が決まっています。
例えば、以下は神奈川にある金属製造業の求人です。
この工場の仕事内容は、Oracle EBSと呼ばれる生産管理システムを運用することです。サーバーやネットワークに関する基本的な仕組みを理解していると、よりスムーズに仕事を進められます。
またシステム運用の仕事は責任感が強い人に向いています。なぜならマシンの電源管理やマニュアル更新なども日々の業務に含まれるので、システム運用の仕事は企業の情報を守ることにも繋がる重要なポジションといえるからです。
- システム保守
他には、システム保守の仕事があります。システム障害が発生したとき、少しでも早く障害の原因を突き止めてシステムを復旧させることがシステム保守の役割です。
このとき1秒でも早い的確な対応が求められるので、工場によっては応募条件として「ITに関する幅広い知識がある人」「SE経験者」などと表記している場合があります。そのため応募前には条件欄を確認するようにしましょう。
例えば、以下は埼玉にある製薬メーカーの求人になります。
この工場の仕事内容は、MESと呼ばれる製造管理システムの保守を行うことです。誰も発見できなかった障害の原因を自分が見つけて問題を解決するとき、仕事のやりがいを感じます。なお社内SEの場合、開発・運用・保守の仕事を一貫して行っている工場が多いです。
例えば、以下は東京にある部材の製造を行っている工場の求人になります。
この工場の仕事内容は、製造管理などで使う社内システムの開発や保守、運用を一貫して行うことです。初めは覚えることが多いですが、SE業務の全てを一つの工場で経験できるため、SEとして立派に成長できます。
また最初のころはプログラミング言語など覚えることが多いので、勉強が好きな人に適しています。一方、地道な作業を継続することも多いので、途中で投げ出したり諦めたりする性格の人には向いていません。
製造業の社内SEはなぜ残業時間が少ないのか?
なお、SIerのSEの仕事はお客さんからシステムの開発などの依頼をいただきお客さんのニーズに合ったシステムを提供することになります。この時に、システム内容や納期・金額などをお客さんと話し合いながら決めて仕事をもらいます。
とはいえ、お客さんは少しでも早くシステムが欲しいので納期を短く設定してきます。さらに、会社側は仕事をもらいたいためお客さんの意見をなるべく受け入れようとします。
そのため、実際には難しい納期で仕事を行わなければいけないので、残業や休日出勤などをして対応するのです。では、なぜ社内SEは残業が少ないのでしょうか。
それは、社内SEの仕事は会社内のシステムを開発したり、保守や運用したりするため納期の設定に無理がなく現実的なところで期限を定めています。さらに、実際に納期に間に合わない場合でも社内のことなので多少の融通が利くのです。そのため、無理な残業や休日出勤などがないのです。
例えば、以下は神奈川にあるゴム製品を製造している工場の求人になります。
このように、SEの業務でありながら残業時間が月に5~10時間程度になっています。このような社内SEに応募することで残業が多くてしんどいということを避けることができます。
工場のSEで必要な資格はあるのか?
次に、工場のSEではどのような資格が必要か気になります。答えからいうと、必ず必要という資格はありません。しかし、資格があると仕事に対する前向きな姿勢が評価されて転職でも有利になる場合があるので、ここではSEに関する資格を2つ紹介していきます。
- 基本情報技術者試験
まずIT系の資格はいろいろありますが、最も多くのSEが取得している資格が基本情報技術者試験です。SEに転職する上で必要な基礎知識が問われる内容になっており、SE未経験者はITに関する基本的な知識を身に付けられます。
また基本情報技術者試験の資格があると、さまざまな製造工場でSEとして活躍できます。
- 応用情報技術者試験
次に基本情報技術者試験の上位資格として、応用情報技術者試験があります。応用情報技術者試験では、ITに関することだけでなく経営や管理などさまざまな分野から出題されることが特徴です。
なお応用情報技術者試験を取得するメリットは、他人よりワンランク上の知識や技能を証明できることです。そのため、将来の工場長やマネージャー候補として転職できたりします。
例えば、以下は東京にある電子材料を製造している工場の求人になります。
この工場の仕事内容は、生産管理システムの設計から保守、運用まで広範囲にわたります。そのため基本情報技術者試験や応用情報技術者試験の資格があれば、学んだ知識をさまざまな場面で活かせるので仕事にも早く慣れることができます。
また資格があると、企業によっては資格手当や合格報奨金を受けられる場合があります。資格手当とは資格を取ると毎月の給料がプラスされることで、合格報奨金は資格を取得したときに現金が支給されることです。
合格報奨金の金額はさまざまですが、例えば基本情報技術者には5万円、応用情報技術者には10万円などと難易度の高い資格ほど支給額が高くなります。なお、資格があると昇給や昇進に繋がりやすいこともポイントです。
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工場のSEは資格より経験者が優遇される
工場によっては資格があると転職で有利になりますが、一般的に工場のSEでは資格より経験者が優遇されています。なぜならSEの仕事は覚えることが多いため、未経験者が一人前になるには時間がかかりますが、経験者であればすぐに企業の即戦力になれるからです。
例えば、以下は東京にある物流工場の求人になります。
この求人では応募資格に「テクニカルサポートエンジニアとして3年程度の経験がある人」と記載しているので、SE経験がない人はたとえ資格があっても応募できません。また「正社員」「学歴不問」となっているため、高卒や文系出身の人でも過去に3年程度のSE経験さえあれば正社員になれることがわかります。
製造業のSEの年収・給料を理解する
次に気になることが、月収や年収などの収入面です。転職する際は現在の仕事より給料が高い仕事を選びたいはずです。そのためにも、まずはSEの給料の相場を理解する必要があります。それにより、自分の興味ある求人を確認した際にその給料が多いのか少ないのか判断できるようになります。
以下はSEの平均給料になります。
平均月給 | 平均賞与等 | 平均年収 |
37.2万円 | 105万円 | 551.4万円 |
この表から、SEの平均月収は約37万円、平均年収は約550万円であることがわかります。製造業全体の平均年収は約300万円なので、SEは製造業の職種の中でも高めの年収といえます。なお、給料は経験を重ねるごとに高くなっていきます。
そこでこの平均給料や平均賞与を参考に、給料があまりにも低い工場のSEは避け、できるだけ好条件の求人を見つけるとよいでしょう。
まとめ
ここまで、工場・製造業のSEに転職するために知っておきたいことについて解説しました。転職を成功させるには、まずSEの仕事内容について理解し、自分に向いているかどうか確認しましょう。
また、工場のSEは「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」の資格を持っていると有利ですが、資格より経験者が優遇されます。
さらに、転職してすぐ「給料が低いから辞めたい」ということが起きないようにSEの平均月収や平均年収を理解しておくことも重要です。
以上のことを踏まえて工場・製造業のSEに転職活動すればスムーズにSEの仕事が見つかり、転職後も充実した毎日を送れます。
工場・製造業に転職をするとき、ほとんどの人は転職サイトを活用します。転職サイトを利用しないで自分の力だけで求人を探すと、希望の条件を満たす求人を見つける作業のみならず、労働条件や年収の交渉・アポ取りなどさまざまな作業を自分でやらなければなりません。
そこで、転職サイトに登録することで、求人の紹介から労働条件や年収交渉だけでなく、履歴書や職務経歴書などの書類関係を送付するなど面倒な事務作業まで行ってくれます。
ただし、転職サイトによって特徴が違います。例えば「工場・製造業の転職に強い」「全国各地に強いのか、それとも都市部に強いのか」「20代・第二新卒が得意」「40歳以上でも転職を成功させてくれる」などの違いがあります。
転職を成功させるには、これらの違いを理解した上で転職サイトを活用しなければなりません。そこで、以下のページでそれぞれの転職サイトの特徴を解説しています。これらを理解することで、転職での失敗を防ぐことができます。